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Event Report — Workshop

恋愛を、実験する。
——恋バナでも、失敗でもない新たな作戦会議

2026.07.05 / CODE BASE NAGOYA / 企画・ファシリテーター:亀田山瑚

恋愛に「正解」はあるのか

恋愛の話になると、なぜか「正解」を探してしまう。

好きな人ができたとき、うまくいかなかったとき、友達に相談するとき——気づけばいつも「どうすればよかったか」「自分はどういうタイプか」「相性はいいのか」という問いを立てている。タイプ論、過去の失敗談、「ポジティブに考えよう」か「もう諦めよう」か。恋愛にまつわる言葉は、どこか両極端に振れがちだ。

もっと恋愛を、新しい方向性からアプローチ出来ないのか。実験のように出来ないのか。

そんな問いを正面から受け止めるイベントを、2026年7月5日に名古屋のコワーキングスペース「CODE BASE NAGOYA」で開いた。題して、「恋愛を、実験する。」LOVE × SCIENCE ─ WORKSHOP。

参加者が持ち込んだのは、白衣でも試験管でもなく、自分自身の恋愛観だ。恋愛を「答えを出すもの」としてではなく、「予想して、試して、考察する」——理科の実験と同じプロセスで向き合ってみる企画だ。「恋バナって、なんか過去の話かタイプ論か、ポジネガ両極端な話をしがちで。そこを"実験"という仕掛けで変えたかった」というのが、私の出発点だった。

実験の設計図——「予想→実験→考察」を恋愛に持ち込む

ワークショップの骨格は、理科の実験そのものだ。まず「予想」を立てる。次に実際に「実験」する。そして結果を「考察」する——このシンプルなサイクルを、恋愛というフィールドで回してみようというのがコンセプトだった。

当日の流れはこうだ。アイスブレイクで場を温めたあと、最初の対話セッション「実験①Before」へ。その後、AIを使った自己診断を挟み、同じペアで同じテーマを再び話す「実験②After」へ。最後に仮説をカードや手紙という形で成果物にして持ち帰る。全120分。

セッションの前に、グラウンドルールをひとつひとつ丁寧に伝えた。

「正解はない。相手を否定しない。この場だけの話。パスOK。」

恋愛は人によっては繊細で重いテーマになる。安心して話せる場をつくることが、最初の実験設計だった。

実験①Before——素の恋愛観を、言葉にしてみる

最初の実験のお題は「恋愛のきっかけ」。A「好意を示された」B「気が合う・楽しい」C「尊敬・憧れ」D「気づいたら好き」——4つの選択肢からひとつを選び、ペアになって話す。それだけだ。

参加者のあいだではBの声がよく聞こえた。「気づいたら好きになってる」「よく喋る、なんか、気づいたら」という声が続く。話が進むにつれ、もう少し深いところにも触れはじめた。「自己開示できると好きになる」という気づき、「付き合うことへの抵抗感」の話、「友達のままだから付き合えない」というジレンマ。

これは答え合わせではない。自分がどう感じているかを、ただ言葉にしてみる時間だ。診断も評価もない。この「素の状態」が、あとで意味を持ってくる。

AI診断——データが照らし出す、自分の盲点

実験①を終えると、次は自己診断へ。今回のために作ったオリジナルのAI診断ツールを使う。13問のスライダー式アンケートに答えると、恋愛タイプ・矛盾しているポイント・盲点、そして具体的なアクションを含む「仮説の方向性」が3パターン提示される。

診断の設計には、Bowlbyの愛着理論・Chapmanの5つの愛情表現・Sternbergの愛の三角理論という3つの恋愛心理学の理論を組み合わせた。「浮気のライン」の設問では「自分が許せるライン」と「実際の自分の行動」を別々のスライダーで入力させ、そのズレをスコアとしてAIに渡す設計にしている。自分でも意識していなかった矛盾を、データとして可視化する仕掛けだ。

参加者のひとりに「これ、Claudeで書いたんですか?」と聞かれて、「ClaudeとClaude Codeと……あと、Claude Designも使いました」と答えた。設計の思想だけ私。Claude三兄弟と理論から作ったラボ、というのが正確なところだろうか。

参加者の反応は正直だった。「スライダーで選んだのがいい感じに言語化された感じ」という声がある一方、「相手を知ろうとしないことがデータに出た」と自分でも気づいていなかった傾向に驚く人も。「相性の表現はいらない」「0があるといい」など、ツールへの率直なフィードバックも飛び出した。

診断結果はそれ自体が「答え」ではない。あくまでも実験のための「仮説」だ。この仮説を持って、もう一度同じ相手と話してみる——それが次の実験だ。

実験②After——仮説を持つと、何かが変わる?

AI診断で得た仮説を頭に置いたまま、同じペアで同じテーマをもう一度話す。これが実験②だ。

「あんまり変わらなかった」という声もあった。そう、変わらなかったのも大事な実験結果なのだ。それはその人の恋愛傾向の安定性を示している、ともいえる。

一方で、仮説を意識することで新しい言葉が出てきたペアもいた。

「でも、あなたは本当は信頼を置いた人にしかその感覚は持たない、と言われて。」「破天荒に見せておきながら、実はちゃう、みたいな」「不信感はないから。だからこそ、その感情になってる人しか信頼してないからこそ、別に居心地いいのかなって」

Beforeのときには出てこなかった言語化が、Afterでは自然に生まれていた。「仮説を意識した状態」と「素の状態」。その差分こそが、この実験の考察だ。

持ち帰るもの——恋愛実験お守りの制作

実験が終わると、参加者はそれぞれの仮説を"お守り"として形にした。中に入れるのは2つ。ひとつは「恋愛実験カード」——今日わかった自分の恋愛傾向と、立てた仮説を手書きする。もうひとつは「自分への実験レター」——今日の気づきと、これから試してみたいことを書いた手紙だ。

このお守り、すぐには開けない。3ヶ月間、そのまま身近に持ち続ける。3ヶ月後に中を開いて、「あのとき立てた仮説、試してみた?」という問いに答える。それが、この実験の本当の考察だ。

手紙を書く作業が、意外と難しかったようだ。「手紙書くのって、難しすぎて」という声が上がると笑いが起きた。「今時メールとかも全部ChatGPTに書かせちゃうから」という発言に、「こういう体験って大事」と応じる声もあった。AIを使って設計したワークショップの最後が、「AIに頼らない時間」で締まったのだ。

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まとめ——「正解」より、「仮説」を持って生きる

恋愛に正解を求めるのは、今はまだ難しいかもしれない。でも、仮説は立てられる。仮説があると、恋愛が"なんとなく流れていくもの"ではなく、自分で設計できる「実験」になる。うまくいかなくても、それはデータだ。変わらなかったとしても、それも結果だ。

参加者のひとりは終了後、こんな言葉を残した。

「なんか、新しい形を見たなと思って。」

恋愛について話す新しいフォーマット——評価でも共感でもなく、実験として——を体験した感想として、これ以上ない一言だと思う。

ちなみに、このWSは3週間前のリハーサルで大幅にプログラムを組み替え、ぶっつけ本番で挑んだ。「面白いことやりたいから、誰かやらない、みたいな感じで集まった人々でやる」——そういうイベントだった。この大きな枠組み、実験自体も、まだ続いている。

答えを探すのをやめて、仮説を持ってみる。それだけで、自分の恋愛観との向き合い方が、少し変わるかもしれない。

本イベントを作るにあたってデザイン面の協力、プレイベントのフィードバック等をくれた勤務先の同期に感謝です。

亀田山瑚

中部大学心理学科 / FabCafe Nagoya
人間関係の全フェーズをツールで解決することをミッションとしている。
次回以降の開催情報は Instagram (@sango35_art) にて。